在中国の日系企業の方とお話しすると、よく出る話題があります。「現地の幹部が、なかなか育たない」という声です。
たとえば、「部長はいる。でも、その次がいない」。「本社に推薦できる人が思い浮かばない」。こうした言葉を、何度も伺いました。
一見すると、人材の質の話に聞こえます。ところが、対話を重ねると、別の姿が見えてきます。
期待が言葉になっていない
まず、役割と期待が伝わっていないことがあります。部長には何を任せるのか。課長には何を期待するのか。それが言葉にされないまま、役職だけが上がっていきます。
これでは、本人も何を目指せばよいか分かりません。その結果、役職に就くこと自体が目的になりがちです。何を判断し、誰を育てるのか。そこまで意識が向かないのは、伝えられていないからかもしれません。
「発展空間」が見えにくい
次に、仕組みの問題です。中国の職場では、「発展空間」という言葉をよく耳にします。この会社で、この先どんな役割や経験に手が届くのか。その見通しのことです。仕事を選ぶとき、多くの人がまずここを確かめます。
ところが、課長の一つ上は駐在員のポストで、その先が見えにくい。創業期から支えてきた方が、長く部長を務めている例もあります。
そのうえ、中国では日本のようなジョブローテーションが難しい環境があります。多くの人は職種ごとに採用され、専門を軸にキャリアを考えます。そのため、異動を打診すると、退職につながることもあります。結果として、一つの分野しか経験しないまま上に立つ人も出てきます。
こうした環境では、発展空間がないと感じた人から離れていきます。加えて、残った人にとっても、部下を育てて仕事を渡すことは得になりにくい。つまり、育てないほうが合理的になってしまうのです。
また、日系企業には「安定」を求めて働く人も少なくありません。こうした人は、会社に長く残ります。ただ、挑戦して失敗しても、本人に得はない。そのため、現状を守ることを選びがちです。こうして、上を目指す人は離れ、残る人は現状を守る。次の層が育ちにくいのは、この両方が重なるからかもしれません。
交代のたびにリセットされる
さらに、駐在員の交代があります。日本人の上司は、数年ごとに入れ替わります。そのたびに、方針ややり方も少しずつ動きます。
しかも、上司が部下一人ひとりの経験や希望をつかめるのは、赴任して2〜3年目だと言われます。ようやく分かってきたころに、交代の時期が来るのです。
すると、現地のスタッフは次の上司を待つようになります。自分で考えるより、そのほうが安全だからです。
ある駐在員の方は、こう話されました。「彼らが悪いのではなく、そういう環境に置かれている」。日本側が方針を決めるほど、現地の人が考える機会は狭まります。
駐在員の側にも苦しさがある
一方で、駐在員の方々も多くを抱えています。任せきれず、つい自分で手を動かしてしまう。本社からは「なぜ中国だけできないのか」と問われる。限られた人数と時間の中で、手探りが続いています。
つまり、育てる側もまた、支えを必要としているのです。
御社では、どうでしょうか
こうして見ると、「育たない」の奥には、人ではなく環境の問題が隠れているのかもしれません。
では、御社ではどうでしょうか。
- 現地幹部に期待していることを、本人に言葉で伝えていますか。
- 部下を育てた人に、次に目指せる役割や経験を示せていますか。
- 駐在員が交代しても、現地の幹部が自分の言葉で語れる方針はありますか。
そして、もし来月あなたが帰任するとしたら、現地の幹部は何を拠りどころに判断するでしょうか。
